ドイツのミュンヘンやネルトリンゲンを訪れると、公共空間から教育施設まで「地域の天然木材」を活かしたウッドデッキや建築が目に入ります。いずれも合法性が明確で、持続可能な森林資源を活用し、加工技術によって高い耐久性を実現しています。
一方、日本ではいまだに WPC(木材プラスチック複合材) や、合法性が疑われる イペ・ウリンなどのハードウッド が多用される現状があります。
本記事では、ドイツで撮影したウッドデッキの写真をもとに、欧州の木材利用の考え方と比較しながら、国産材の高耐久処理がなぜ最も持続可能で合理的な選択肢なのか をわかりやすく解説します。
1. ドイツ・ミュンヘン美術院のウッドデッキが象徴する「地域材」と「持続可能性」



ミュンヘン美術院の校舎前のウッドデッキ(2005年頃の製作のようです)
ミュンヘン美術院の外構やデッキでは、ドイツ国内のスギ・トウヒ・モミなどの針葉樹を熱処理や加圧処理 が広く使われています。
特徴は以下の通りです:
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合法性の証明が明確
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地域材を使うことで輸送コスト・CO₂排出を削減
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熱処理によって耐朽性が向上
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補修しやすく、廃棄も容易
ドイツでは「合法で持続可能であること」が前提であり、熱帯材を輸入して使うことは環境面・倫理面で避けるべきと考えられています。
2. ネルトリンゲンのウッドデッキに見る「地域と景観に調和する国産材利用」


ネルトリンゲンの木製バルコニー

”進撃の巨人”のモデルとなった城壁の木製の回廊
中世の街並みが残るネルトリンゲンでも、広場・公園・公共歩道に多くの木材が使われています。
特徴は以下の通り:
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地元の森林組合の木材を優先採用
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加圧注入材など、耐久処理を適切に選択
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修理・メンテナンスしながら長期利用する文化
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“自然と共存する”というドイツ的価値観の反映
つまり、素材の選択が「環境配慮」+「地域経済」+「景観価値」すべてにリンクしているのです。
3. 日本はなぜWPCや熱帯ハードウッドを使い続けるのか?
実はここに大きな問題がある
日本では、公共工事・住宅問わず、以下の材料がいまだに主流です:
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WPC(木材プラスチック複合材)
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イペ・ウリン(熱帯広葉樹)
しかし世界の潮流から見ると、どちらも課題が多く、持続可能性の観点から評価は低下しています。
3-1. WPCの環境負荷:エコに見えて“実はエコでない”
WPCは木粉+プラスチックでできており、次の問題があります:
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リサイクル困難(再分離・再成形がほぼ不可能)・・実際、廃棄処分の金額が非常に高いのです。
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紫外線劣化によるマイクロプラスチック問題
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焼却処理必須でCO₂排出が大きい
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夏場の高温化・熱溜まり・・・今年の夏を思い起こしてください
「木のように見える」だけで、実際には合成素材であり、欧州ではWPC採用は縮小傾向にあります。
3-2. イペ・ウリンの合法性リスクと環境破壊
イペやウリンは硬くて耐久性が高いと言われてきましたが、
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違法伐採の疑い
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輸出規制の強化
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森林減少の深刻化
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トレーサビリティ(流通経路)の不透明さ
など、環境負荷と倫理的課題が非常に大きい素材です。
欧州では公共工事での熱帯材使用はほぼ“禁止レベル”です。
4. 日本が採用すべき答えは「国産材 × 高耐久処理」と思います。
ドイツの事例と比べても、日本が進むべき道は明確です。
4-1. 国産材の高耐久処理は環境・機能・経済のすべてで優れる
具体的には以下が推奨されます:
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熱処理材(サーモウッド技術)・・シロアリの蟻害には弱いが
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アセチル化処理材(Accoya同様の技術)・・金額が高いが
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加圧注入材(JAS認定レベルでk4)、耐久性をさらに上げるための工夫がLBウッド
これらは、
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国産の地域材活用でCO₂削減
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合法性100%
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耐久性はWPC・熱帯材同等以上
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リサイクル可能で廃棄時も環境負荷が小さい
と、世界基準で見ても“最もバランスの良い選択肢”です。
5. まとめ:ドイツの風景が示す、日本の木材利用の未来
ミュンヘンやネルトリンゲンのウッドデッキが示しているのは、たった一つのシンプルな事実です。
サステナブルな社会は、地域の木材を賢く使うことで実現する。
日本にも豊かな森林と高度な耐久処理技術があります。
WPCや違法リスクのあるハードウッドに依存する必要はありません。
これからの日本は、国産材+高耐久処理を選択することで、環境・経済・文化すべてを守る未来がつくれます。


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